ドイツの路面電車

 

フランクフルト市内の軌道

今ドイツにいます。
初日フランクフルトの路面電車に乗りました。
この夏はLRTは後回しにして、自転車道に集中しようと思っていました。
日程に余裕があったらカールスルーエなども回ろう位に考えていました。
ところが自転車道の情報収集のために立ち寄ったフランクフルトで いきなりLRTの洗礼を受けてしまいました。
やはりLRTには「これぞ文明だ!」というくらいのインパクトがあります。

フランクフルトの街中には三つの種類の電車が走っています。
一つはS-Bahn。これはドイツ鉄道が運営しているものです。
次にU-Bahn。これは地域の運輸連合が運営しています。
最後にStrassenbahn路面電車ですが、これも運輸連合の運営です。
U-BahnのUはUntergrund、英語ではundergroundから来ていて、 町の中心部では地下を走っているのですが(S-Bahnも同区域では 地下を走るので違いは運営主体に求めるしかない)、 ちょっと街中を外れると路面を走り始めます。
こうなると路面電車との違いは外見からは分かりません。
電車の塗装の色も同じグリーンムーバーの色です。
しかし中に乗ると違いははっきりします。
U-Bahnの市中の駅の構造は日本の地下鉄と同じで、 つまり低床車というものはありえません。
ところが街中を外れると、鉄道駅としての高さのあるホームと、 道路上の路面の駅というか安全帯が混在しているのです。
路面駅ではステップが降りるようになっています。
技術的にどう対応しているかは見て分かりました。
ただ路面駅ではドア付近の床が下降するので、日本のような すし詰め電車状態だと危険だと思います。

路面電車は低床車の比率は高いですが、そうでない 電車も走っています。こうなるとU-Bahnとの違いは、 路面電車は駅の高さが常にほぼ路面と同じ高さの電車 と定義する他ありません。
安全帯は路面よりはいくらか高くなっており、それがない路上で 乗り降りする停車場ではやはり低床車とはいえ僅かな段差は残ります。

ところでU-Bahnの駅構造の混在型だとバリアフリーが問題となりますが、 この件については別メール「Erlangenの駅」で書きます。

フランクフルトでは路面電車、地下鉄(U-Bahn)などの拡張計画があるようです。

次に立ち寄ったAschaffenburgアシャッフェンブルクでも 鉄道路線の活性化をいろいろ試みているようです。

[2002/08/11 全国鉄道利用者会議MLへの投稿]


Erlangenの駅

 

路面電車が郊外で鉄道に乗り入れるというカールスルーエ方式での バリアフリーの問題を考えるために、現在滞在中のErlangenの駅を 観察して来ました。

Erlangen駅のホームの高さには二通りあります。
Gleis1(一番線)と4は高めで腰の高さくらいあるが、それでも 胸の高さくらいある日本のホームに比べると低い。
Gleis2と3は膝下の高さ。
子供がGleis2から1まで走って渡って駅員に叱られていた。
どちらにしてもそんな高さ。

InterCity、ICEは必ずGleis1か4に停まる。
一階建ての普通地方列車はどちらの高さのホームにも停車していた。
二階建ての低床列車もどちらの高さのホームにも停車していた。
地方列車は今この二階建ての低床タイプが多く、低いホームに 対応しようとしている。
地方鉄道でもバリアフリーを進めようとしているということか。
この点は旧式タイプの乗り難さの方が問題とされて良かったのかも。

鉄道と低床のLRTの相互乗り入れとなると、日本の場合 バリアフリー以前の問題として、鉄道駅のホームの高さが障害となるのでは。
視覚障害者が線路に転落する事故についてもホームの高さがもっと 低ければ不幸は小さかったであろう。

[2002/08/11 全国鉄道利用者会議MLへの投稿]


ザールブリュッケンとカールスルーエ

 

今回のドイツ旅行の主目的は自転車道の調査だったの ですが、最後は路面電車に照準を切り替え、 ザールブリュッケンに二泊、カールスルーエに三泊して来ました。

その前にミュンスターに行く途中、カッセルで乗り換えた際に 駅前の路面電車駅を見てきたのですが、駅ホームから 路面電車まで全く段差無く行けるようにしてあるのは 徹底していました。ただ鉄道車両入り口には段差が ありました。
またカッセルのヴィルヘルムスヘーエの駅はホームの 着席という点でも一工夫してありました。

これは資料で読んだのですが、カッセルは路面電車のDB線乗り入れに邁進中のようです。

ザールブリュッケンですが、ここは計画された路面電車路線の 建設が停滞気味のようで、早まって購入した直流交流両仕様車両を カッセルに貸し出したりしているとのこと。
ザールブリュッケンの路線は最後一駅だけフランスの鉄道に 乗り入れていて、私のフランスへの第一歩はパスポートも 持たないあっけないものとなりました。
ザールブリュッケンで最も印象に残ったのは、駅前の路面電車と バスの停留所の地下を自動車が走るようになっていることで、 地下鉄とはまったく逆の公共交通優先の発想です。
時速は市内で50km、郊外の専用軌道で90kmでした。

さて本命のカールスルーエですが、ここでは24時間フリー切符を 買って、いくつもの路線に乗りましたが、メインはHeilbronn行き だったでしょうか。
DB線に乗り入れた後、最後はHeilbronnの街で再び路面電車と して走ります。
つまりここでは富山の路面電車がJR路線を経由してそのまま 高岡の路面を走るようなことが起きているのです。
カールスルーエのDB線乗り入れでは、これまでの駅に加えて さらに細かく停留所を設けているのですが、駅と駅の間隔の 短さには驚きます。ところによっては市内バス並みです。
しかも小さな停留所の前では車内放送で
「Der Zug haelt bei Bedarf.(要望に応じて停車します。)」
と言っているのです。つまり降りたい人はボタンを押してください、 ということで、乗降客がいないときは電車は停まりません。
これは「路面電車の鉄道路線乗り入れ」と表現するより、 「地方鉄道の路面電車化」「地方鉄道と路面電車の融合」と いったほうがいいかも知れません。
まさにこれは地方鉄道の革命です。
地方鉄道のこんな再生のさせ方があったのかという感動があります。
地方鉄道のあり方の根本的な見直しと言っていいです。

この方法は日本でも取り入れ可能だと思いました。
ただ以前メールで書いたように、既存のホームは使えません。
でもここでもどうせ停留所の新設をしているのですから、 ホームは全て新しく造ればいいのです。駅舎を建てるわけではなく、 短い低床用のホームだけを造ればよいわけですから、そんなに 費用は掛からないでしょう。単線の区間などでは片側にしか ホームを造っていないところもありました。
既存の駅施設のあるところでも、低床車両用のホームを 新たに造る必要があるでしょう。

(ということはつまり、ホームを新設する余裕のないところでは この方法は難しいということになります。大都市圏では厳しいでしょう。
今回の路面電車の見学では今尾恵介氏の『路面電車』を 参考書にして乗って回りました。取材は緻密かつ正確で、 賞賛に値します。
それが停留所のホームの高さにも言及していながら(P171)、 日本のホームの高さについては考察することなく、中央線が 神保町の町中を走ることが可能であるかのようなことを 書いているのは不可解と言う他ありません。)

ただ乗車方法の見直しは必須です。
カールスルーエのやりかたのポイントは、このようにマメに 停車して乗客を集めつつも、都市間を結ぶ鉄道としての 機能を失っていないということにあります。
Karlsruhe - Heilbronn間はドイツ鉄道のRegionalExpressで 90分掛かりますが、この路面電車も102分で行ってしまうのです。 まさしく両者を兼ね備えているのです。
(DB線上での最高時速は私の見た限り95kmでした。)
これをなしとげるには運転手が切符の管理などをしている 暇はありません。
ハイルブロン行きの路面電車には細かい駅には停まらない 快速もありこれだと90分です。

ただ運転手が車掌的役割をしていない訳ではありません。
客が行き先、乗り継ぎ、切符のことなどで相談しているのを 見ました。また切符の取り扱いも全くしないわけでもないようです。
ただ実際に切符の販売をしているのを見たのは子供相手の 一回だけでした。
検札はマメに行っているようで、二日目に乗ったとき、検札に 遭いました。他にも検札を終えて下車する職員を目撃しています。

ザールブリュッケンでもそうでしたが、ここでもバスとの接続には 気を遣っているようです。

ただカールスルーエにも問題が無いわけではないようで、 再び目抜き通りの地下化計画が持ち上がっています。
九月の総選挙の際に住民投票をする事になっています。 どういう結果が出るか注目です。

[2002/09/01 全国鉄道利用者会議MLへの投稿]


清水真哉の交通問題

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