蒸溜酒


原料

A 蜂蜜(ミード)

B 果実類
葡萄(ワイン)
林檎(シードル)
パイナップル
その他の果物(フルーツ・ワイン)

C ヨーロッパにもともとあった穀類
ライ麦
ライ麦麦芽
カラス麦
大麦麦芽(ビール)
大麦
小麦

D 新大陸からヨーロッパにもたらされた穀類
玉蜀黍
ジャガ芋

E 新大陸にある特別な原料
竜舌蘭
砂糖黍
廃糖蜜:砂糖黍を絞った汁を濃縮して固めた、残りの母液。
モミ?
カバ?

F 東アジアで用いられている穀類

薩摩芋
こうりゃん
タピオカ[キャッサバの根茎から採った澱粉(を球状に固め乾燥させたもの)]


棗椰子の樹液
ココ椰子の樹液


馬乳

@泡盛と球磨焼酎は絞らないままの醪を蒸溜している。これは蒸溜酒一般に普遍的な問題を投げ掛ける。スコッチやコニャックは絞ってから蒸溜するのかそれとも?
スコッチは絞らない。コニャックは不明。

廃糖蜜アルコール、甲類焼酎に焼酎の名を使わせるべきではない。
甲類焼酎は本当に単なる廃糖蜜アルコールなのか。
たとえば「純」は、麦96%、コーン4%である。
しかし大部分は、糖蜜から取った粗溜アルコールを主原料としている。
でも甲類は本格焼酎という名を使えないのだからそれでいいではないか。
問題は甲類焼酎の原料に対する統制がないことにあるのではないか。


副原料

副原料は香味付けという目的で用いられる。

浸漬という技術
A オープスト・ガイスト
B 穀物を原料とした北欧の蒸溜酒
ジュニパー・ベリー(杜松の実)
ハーブ
ズブロフカ

*浸漬という技術はリキュールの製法と密接に関わる。

ピートによるスモウキー・フレイヴァー

*焼酎の糖化・発酵の過程で使われる麹は、一種の香味付けとして働いている。

カクテルというものは、蒸溜酒の香味付けに完全な自由を求めた酒の飲み方といえる。

着色料として使われるカラメルつまり焦がした砂糖は、酒の味に影響せざるをえない。


糖化・発酵

ヨーロッパ系穀物蒸溜酒:大麦麦芽自身が持つ糖化酵素(アミラーゼ)による糖化。酵母菌による発酵。
サワー・マッシュ法:純粋培養酵母の他に、前回の発酵液の残り(ダンダー)を加えて発酵させる方法。
スウィート・マッシュ法:純粋培養酵母によって発酵させる方法。

糖化酵素、発酵酵素を用いる方法。

麹(米麹・麦麹)
黄麹菌:清酒用。腐りやすい。昔は焼酎作りにもこれを使っていた。いまでも一部で使われている。
黒麹菌:泡盛用。壱岐の麦焼酎にも使われている。
白麹菌:黒麹菌の変異体。現在、泡盛以外の焼酎作りに主として使われているもの。
大正十三年、大蔵省鹿児島税務監督局鑑定官・河内源一郎が発見。
赤麹菌?:中国酒?

日本酒では麹を作る段階で酵母を入れている。

一次醪(酉元)と二次醪の区別

焼酎をヨーロッパ系の蒸溜酒と区別するもの、それは麹の使用である。
ここからすると日本の焼酎は、米麹によるものと、麦麹によるものに二大別されることになる。
伝統的焼酎は麹を使う。この麹の匂いを嫌う人が少なからずいるのは不思議なことではない。
とりわけチューハイを作るのには、乙類より、甲類の方が向いているとも言えるのではないか。甲類焼酎はチューハイ用焼酎と理解しておくのがよろしかろう。


蒸溜方法

2002年5月米子市の歴史館(?旧市役所)で見た江戸時代の単式蒸留器「らんびき」。
 

1826年、ロバート・スタインが連続式蒸溜器を発明。
1831年、連続式蒸溜器がヨーロッパで開発される。
明治30年頃、イルゲス式連続式蒸溜器が、初めて日本に来る。
昭和25年、協和発酵がアロスパス蒸溜器を導入。
現在日本で使われているのはスーパーアロスパス蒸溜器。
アロスパス:ギリシャ語で、第三の物体による分離の方法。
乙類焼酎においては、常圧蒸溜と、減圧蒸溜のふたつの方法がある。
減圧蒸溜は昭和四十年代後半に始まった。

ニッカがグレイン・ウィスキィを作る際に用いているカフェ式の連続式蒸溜器とは何か?
蒸溜時の温度の問題。

なぜ蒸溜酒の蒸溜時のアルコール度数制限があるのか。これは簡単である。蒸溜時のアルコール度数が高いということは、それだけ酒の香味のもととなる雑成分が少なく、個性の乏しい酒となってしまうということである。
アルマニャックで使われる蒸溜器では52度しかいかない。
コニャックは67〜70度。これは規定ではなく実際のこと。
ブランデーに関するECの規定では最高86度まで。
この点に関してはNicholas Faithの8ページを見よ。
スコッチのモルトウイスキーは二回蒸溜で約60度。これは規定ではなく実際のこと。ちなみに原酒は6、7度で、一回目の蒸溜後は約20度。
アイリッシュのモルトウイスキーは三回蒸溜だからもっと度数は高いであろう。
バーボンも80度未満となかなか厳しい。
日本のウイスキーは95度未満。
連続式蒸溜器では最高96.6度迄いく。95度とは、中性アルコールではありませんというぎりぎりの線である。

焼酎は単式蒸溜器を何回使用しているのであろうか?

蒸溜前の原酒のアルコール度数は、蒸溜後のエキス分の濃度にどのように関係するのであろうか?
焼酎が、ウォトカ等のようにとろりとしないのは、蒸溜前の酒のアルコール度数が高いことに原因があるのではなかろうか?


濾過

活性炭による濾過。白樺や椰子を焼いた活性炭を用いる。
これは恐らくロシアのウォッカで始められた?十八世紀末期。
テネシー・ウイスキーはサトウカエデの炭を使う。
バーボンでもしばしば使われる。
ホワイト・ラムやテキーラでもしばしば用いられる。


熟成

ブランディの樽熟成はいつ始まったのか?
ウィスキーで樽熟成がされるようになったのは、たかだか十八世紀後半である。
樫樽(オーク樽)
スコッチのいいものは、シェリーの空樽を使っている。
内側を焦がしたオーク樽−ジャマイカ・ラムで始まり、バーボンでも取り入れられた?
ラムの樽熟成はいつ始まったのか?

樽の香を付けることなく熟成させることは難しいのであろうか。ホワイト・ラムで一部行なわれているようであるが。
泡盛は甕(かめ)で熟成される。


酒はもともとは甕に貯蔵されていたものと思われる。
古代地中海世界の遺跡からは酒を入れた甕が発掘される。

大航海時代になり船に酒を積む必要が生じたが、甕は船に積むには重い上に割れ易く不向きである。
樽ならば陶器の甕よりも軽く、割れるということはない。

樽を作るには高度な技術を要するが、必要のためには人は努力をするものである。

樽はしかし、その成分が酒の中に滲み出てしまう。
船乗り達は木の成分から来る味を嬉しく思わなかったであろう。
船中のことゆえ、止むを得ず我慢して飲んでいたに違いない。
だがいつしか誰かが気付いたのであろう。
最初は渋く不快だった木質成分が、時を経ると元の酒にない味や風味を加えてくれるようになることを。
この経験から酒造業者は地上において酒を貯蔵する時も、甕ではなく樽を使うようになったのではないか。

2019/11/23


加水

加水は二度行なわれる。
蒸溜が終わって熟成を始める前。
製品化する時点。
これは本当か?加水をした後は暫らく時間をおかなくていいのか?

アルコール度数が何度の状態で熟成をするかという問題。

加水後の慣らしの問題。


蒸溜酒とは、端的に言って水で薄めたアルコールである。蒸溜酒の種類の区別は、アルコールを取る原料から来る成分、またその他の原料や樽などによって加えられる成分によって生じる。濾過という引算が行なわれることもある。
蒸溜される原料のうち、どの成分を残したいのであろうか。
まず第一はアルコールである。アルコール以外の成分を残したいか残したくないかは全く好みの問題と言えまいか。

ブランディ=葡萄+樽
マール&グラッパ=葡萄(+樽)
カルヴァドス=林檎+樽
フルーツ・ブランディ=果物(+樽)
コルン=穀物(+樽)
ジン=穀物+杜松
アクアヴィット=ジャガ芋+ハーブ(+樽)
ウィスキー=穀物+樽(+ピート)
ウォッカ=穀物−白樺の活性炭(+香味成分)
ラム=砂糖黍(+樽)
テキーラ=竜舌蘭(+樽)
白酒=穀物+麹
焼酎=原料+麹(+樽)


南欧・東欧南部 果実の蒸溜酒
南欧 ブランディ
ロシアを含めた東欧 プラム・ブランディ
北欧・東欧北部 穀物の蒸溜酒
中南米・東南アジア 砂糖黍の蒸溜酒
中近東・北アフリカ 棗椰子の樹液
スリランカ ココ椰子(ココナッツ)
東アジア 米や雑穀、タピオカ(キャッサバの根茎から採った澱粉)
モンゴル 馬乳酒を蒸溜する

なぜ東欧のフルーツ・ブランディは、世界に出回って来ないのであろうか?


ホワイト・スピリッツ

白酒=穀物+麹
焼酎=原料+麹(+樽)
コルン=穀物(+樽)
ウォッカ=穀物−白樺の活性炭(+香味成分)
ジン=穀物+杜松
アクアヴィット=ジャガ芋+ハーブ(+樽)
フルーツ・ブランディ=果物(+樽)
マール&グラッパ=葡萄(+樽)
ラム=砂糖黍(+樽)
テキーラ=竜舌蘭(+樽)

蒸留酒の中で樽熟しないものが絶滅してしまったのは、ウィスキーとブランディとカルヴァドスである。
ホワイト・モルト・ウィスキーというものがあったら一度飲んでみたい。大麦麦芽100%で出来たホワイト・スピリッツの最高級品。


タイ焼酎(ラオロン・ラオカオ)

アユタヤ時代に琉球に伝わり沖縄泡盛のルーツとなった。

モンシャム Mon Siam「輝けるタイ、タイの心意気」
原料:タイ産ジャスミン・ライス
単式蒸溜
竹炭濾過
30度
輸入業者 株式会社サンケイ 東京都江東区住吉1-15-9
700ml
2010/6/20 レストラン タイランド(錦糸町)で注文した物の飲み残し
2023/2/26(日)
無色透明。
澄んだ香りがする。
泡盛と原料は同じはず。
なのに味はずいぶんと違う。
糖化醗酵にはやはり米麹を使っているのであろうか。


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