私が以前さかなに関するメーリングリストに参加していた時に投稿した文章です。
投稿の日付は2000年7月3日です。


> イワシの発酵食品だったかの世界一臭い缶詰食品の話を読んだか
> 聞いたかした折りには、食文化もすさまじいものがあるなと、
> 感じ入ったものです。
>
> NHKの「ようこそ、先輩」で故郷の小学校に行って、
> このかんずめ、開けていましたよ。スエーデンだったかな?
>
> 子ども達は、すっげええ!!クッッサーーイ!!と教室から
> コホコホとやってましたね。しかし、そのイワシを食べると、
> 「美味しい」と子供達は言うんですよ。
> 面白いですね。

 

清水と申します。

この世界一臭い缶詰は、シュールストレミングといいます。
(小泉武夫『人はこうして美味の食を手に入れた』河出書房新書P107)
材料は、鰯ではなく、鰊(ニシン)です。
ヨーロッパは、南はオイル・サーディンやアンチョビに
代表されるように鰯がメインですが、北は、ニシンです。

昨年夏、北欧を旅行した時に、ストックホルムの
スーパーマーケットで、半ば膨張した缶詰の山を見つけた時には、
これだ!と叫び、直ちに一缶購入しました。
その後、ストックホルム郊外の湖畔に出掛けた折りに、
缶をビニール袋の中に入れ、そこに手を差し込み、
ヨーロッパ式の使い難い缶切りで開缶しました。
猛烈な悪臭を伴った液が吹き出してくるところまでは、予想の
範囲だったのですが、開けた途端に、どこから湧き出してきたのか、
蝿が大量に寄ってきたのには困惑しました。
醗酵ニシンをクラッカーの上に乗せて、
アクアヴィットという北欧のスパイス入りウォッカを啜りながら
食べましたが、蝿との絶えざる闘いでした。
同行者は、近寄ろうともせず、蛮行に励む私を、ひたすら写真に
収めておりました。
さて問題の味のほうですが、とにかく悪臭がするので、
まず、嗅覚と味覚を分離して働かせる才が欲しく思いました。
味は、塩味、炭酸味、旨味とありましたが、
初めてこの世界有数の臭い食べ物を食べた私の直感では、
北海道産カマンベールと、本家本元のカマンベールの味に天地の
違いがあるように、スーパーで売っているようなものではない、
もっと上質の、すっかり醗酵が済んだ、味の熟れきった
シュールストレミングがあるに違いないと思いました。
美味しくなかった訳ではありませんが、もっと上があると
睨んだという次第です。
再びスウェーデンに行く機会があったら、もう一度食べてみたいと
思いますが、室内で開缶することは厳禁なので、
人気の無い場所を探すのがちょっと億劫です。

それでは。


清水真哉の食

清水真哉のホームページ inserted by FC2 system