清水真哉の大放言・国際政治


今月18日、日本の企業連合がイラン・アザデガン油田の開発権を獲得した。
同油田は推定埋蔵量260億バレルと世界トップレベルだそうである。
サウジアラビアのカフジ油田を失っている日本にとっては、国家的目標だったはずだ。
この交渉はイランの核開発疑惑のためにアメリカから横槍を入れられ、停滞していた。
イランが国際原子力機関(IAEA)の核査察を受け入れたことで交渉が進んだとされているが、アメリカは今でも日本がイランに投資することを快く思っていない。
日本がここで強気の態度に出られるのには裏がある。
自衛隊のイラク派兵で恩義のあるアメリカは今、日本に対して強くノーとは言えないのである。
だとしたら日本のイラク派兵は、アメリカ追従外交どころか、意外な独自外交だということになる。
石油のための自衛隊派遣と指摘する人はいるが、イラクの石油ではなくイランの石油だったとは、日本政府もなかなか強(したた)かなものである。
2004/2/23


小泉はあくまでも自衛隊をイラクに派遣したいらしい。
まあ良い。
とりあえずは人を殺しに行く訳ではなく、殺されに行くだけなのだから。

☆ ☆ ☆

小泉はまもなくその地位から去るブッシュ大統領に義理立てして、自分も総理の椅子を降りるつもりのようだ。

☆ ☆ ☆

今回の自衛隊イラク派遣議論の馬鹿馬鹿しさは、そもそも何の為にそこに行き、誰の益になるのかさっぱり分からない点にある。
復興支援とは何ぞや?
隣国イランで起きた地震の復興支援にでも出掛ければよい。

2003/12/26


二人の外交官が殺害された事件について日本政府やマスコミは、テロであったなどと言っているが、おこがましい話で、これはイラク人民の独立を求める崇高な戦いの一環である。
二百年以上前にアメリカが戦ったのと同様の独立戦争なのである。
2003/12/05


日本外交がまた一つ成功を収めた。
先月31日、北朝鮮人十人がタイ国バンコクの日本大使館に駆け込んだ。
第一報のニュースでは、その人達は日本への亡命を希望していると確かに言っていた。
ところがその後のテレビニュースの続報では、大使館はその人達がどこの国への亡命を希望しているのか確認をしていると言い始め、そんなことを確認するのにそんなに暇が掛かるのかと言いたいくらい、後の時間帯の二ュースでも同文の原稿が読み続けられたのであった。
それが今日のニュースによると、日本政府にとってはめでたいことに、北朝鮮人十人は韓国への亡命を希望しているのだそうである。
ここまでの長い時間がなにゆえ必要であったのか、それは明白である。日本外務省の説得外交は、また一つ輝かしい成功を収めたのであった。
2003/08/22


 国連が少しでも大国の意向に左右されない自立性を得るためには自主財源の確保は不可欠である。国連は徴税権を必要としている。
 課税対象として第一に挙げたいのは国家間の武器の取引である。国連は今でも国際紛争の度に出費を余儀なくされる訳で、紛争に必要な武器を売って儲けた国から税金を徴収するというのは理にかなったことであると思う。
2003/04/01


 アメリカがイラクを攻撃しようとする理由は、大量破壊兵器が拡散しテロに利用されることを防ぐためなのだそうだ。
 だがテロを起こすためにはテロの道具の他に動機が必要である。そしてテロのための道具よりもテロへの意志の方がより危険である。
 意志さえあれば何を使ってでもテロはできる。人間が密集して生活している現代都市では、ちょっとした知恵で大量殺人は可能である。それは今回の大邱での地下鉄放火事件でも再び明らかになった。ニューヨークをイェルサレムに変えることはいつでも可能なのである。
 イラクに対する戦争が、テロへの危険な意志を育むことは十二分に予想されうる。
 自衛のための雑貨を買い集め、ワクチン注射を受けるアメリカ人たちは、この戦争の損得をどう考えているのであろうか。
2003/02/19


 日本と同様、台湾もまた沈降を続けている。強力なエネルギーで発展を続ける大陸中国に飲み込まれてしまっている格好である。
 香港の独立と繁栄は植民地時代の遺産であったが、自由経済国家台湾は冷戦時代の産物である。中国が改革開放され急速に資本主義化していく前にあっては、その独自性は失われていくばかりである。
 二十世紀後半の冷戦時代にあっては二つの中国は東アジアの大きな政治問題であり緊張を孕んだものであったが、これから台湾は自らのアイデンティティの確保に苦渋していくであろう。
 米国・欧州と並ぶ大国となった中国に比して台湾は小国に過ぎず、両国の本格的な軍事衝突などを想像することは難しくなるだろう。
 2002/12/22


 EU拡大を続けるヨーロッパが中世のキリスト教世界への回帰の様相を見せているように、東アジアでも中国を中心とした古代・中世に似た時代がやってくるだろう。冊封体制が再現するとは言わないが。
 2002/11/03


 拉致被害者およびその北朝鮮にいる家族のいわゆる「帰国問題」が迷走を始めた。(北朝鮮にいる家族は日本に暮らしたことがないのだから帰国ではなく来日と言うべきである。)
 間違いの元は、日本政府が北朝鮮との約束を違(たが)えて、日本に一時帰国した五人の拉致被害者を帰朝(朝鮮に帰るという意味で使っています)させないまま、被害者の北朝鮮にいる家族が日本に来るよう要求すると決めたことにある。
 日本政府がこの決定をした背景には被害者家族がそのような要求をしたことがある。日本政府としてはいったん帰朝させたはいいが、万一そのまま戻って来られなくなったりした時の責任問題を恐れて、被害者家族の言うことを聞いてしまったのだろうと思う。しかし少なくとも政府は平壌行きの飛行機を用意し、乗るか乗らないかは被害者本人に決めさせるくらいのことは出来たはずである。
 これまでの経緯から北朝鮮に対して不信感があるのは当然理解できるが、国交正常化交渉をするとはこれから両国の間に信頼関係を築いていきましょうということである。その話の初めに「あんたのことは信頼できないから、あんたとの約束は守らなくてもいい」などと言ったらこじれるのは当たり前のことである。
 北朝鮮が主張する通り、「拉致問題は本質的には既に解決している」のだと思う。北朝鮮にはそれだけの覚悟が出来ていると私は見る。北朝鮮はもはや拉致問題を交渉カードには使わないだろう。
 日本政府の方針のより根本的に問題なところは、拉致被害者やその北朝鮮にいる家族の意思を確認しないまま、横田めぐみさんの娘や曽我ひとみさんの夫なども含めて日本に来ることを要求していることにある。これを原状回復などと称する人たちがいる。
 だが拉致の後にも月日は人々の上に積み重なっているのである。北朝鮮で生活の基盤を築いてきた家族にそれを捨てて、言葉も分からない日本で暮らすように要求する権利など、拉致被害者の日本人家族や日本政府にあるのだろうか。しかも横田めぐみさんの娘の父親は北朝鮮人である。娘に日本に永住させるとは父親と無理やり引き離すということである。これでは今度は日本政府が拉致をするようなものだ。
 問題は非常に困難でデリケートなのである。やはり五人の拉致被害者は一旦帰朝させて、今後について話し合ってもらうしかない。
 この点「本人の意思に従う」という北朝鮮政府の方針こそ正論である。
2002/10/31

 三十年後、今の北朝鮮という国家がこの地上に存在し続けているということはありえないことで、日本も北朝鮮という国家の消滅にいたるシナリオを想定しつつ行動する必要がある。
 アメリカ政府が中国の反対にもかかわらず重油の供給を止めたことは、体制を支える軍部の動揺を誘うという意味で理解できるが、しかしアメリカと日本とでは地政学的な位置が全く異なるという事を忘れてはなるまい。アメリカは北朝鮮が一暴れの後息絶えたとしても直接の害はないが、日本はどうしても軟着陸してもらわなくては困るのである。
 ブッシュ政権が悪の枢軸への指名以降、北朝鮮に対してハードライナー路線をとるのは構わないが、子育てで父親が子供を厳しく叱ったら母親は子供の話の聞き役に回るといった役割分担が必要なように、アメリカの態度に合わせ日本は外交のパイプをしっかり残すことが求められているのである。北朝鮮もそれがために拉致問題に関しては原則的に日本の言うことを聞く方針でいることは見れば分かるのである。
 家族会は外交の素人なのだから、外務省は外交のプロとしてはたらき、拉致被害者とその家族のためには結果として最良のものをもたらすのが仕事のはずであるが、今は短視眼でおセンチなマスコミ・国民とそれに引き摺られる政治家のせいで、家族会がまるで外交総本部のような格好になってしまっているのは困ったことである。
2002/11/24

 北朝鮮が核開発を凍結しようとも、KEDOによる軽水炉の建設は停止すべきである。
この地上のどこにおいても原発は作るべきではないからである。
 グリーンピースなどの反原発の運動をしている団体がこの問題について発言しないのは不可解である。
2002/11/26


シェンヤン(瀋陽)領事館事件について
この事件については皆、頓珍漢な事ばかり言っている。
日本外交の基本は(法務省も含めて)、難民には来て欲しくないの一語に尽きる。
ここから見れば例のビデオに映った領事館員の行動は全く納得がいくのである。
中国軍が領事館の敷地に立ち入るのをなぜ阻止しなかったのか等と批判があるが、日本外交にとって立ち入りを阻止すべき迷惑な存在は亡命希望者なのである。それを排除しに来てくれたのだから、どうぞどうぞお入り下さい、はい御苦労様、謝謝と言うのは友人としての礼を尽くしたと言うべきである。
中国が副領事の同意を得て敷地に入り、領事館員は謝意を表したと主張していることに対して日本政府は抗議しているが、中国側は仰天たまげていることであろう。
日本政府は亡命希望の五人を帰せと言っているが、これは日本政府の本心ではなく、国際社会向けの格好つけに過ぎない。
この件は外務省がたるんでいる等という問題ではないのである。日本の難民政策が世界の目にさらされた出来事なのである。
ところで韓国のNGOが映したという例のビデオであるが、公開のタイミングが早すぎたのは残念至極である。あのビデオがなければ外務省はもっと嘘でたらめを言い募ったに違いない。嘘が溜まったのを見計らって公開してやれば痛快なことであったろう。


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